順天堂医院 春の先端医療体験レポート

ロボット支援 低侵襲手術の可能性 2日目:心臓血管外科

2日目午後の手術を担当するのは2人目のエキスパート、田端実・主任教授です。米国や欧州で内視鏡を駆使する高難度の心臓手術の技術を習得し、2021年に天野教授の後継者として順天堂大学心臓血管外科の主任教授に就きました。

従来の心臓手術は胸の真ん中にある胸骨を大きく切りますが、田端教授の専門は患者さんへの負担が少ない手術。切開する皮膚はほんの数センチで、内視鏡のモニターを見ながら執刀をします。この低侵襲心臓手術の特徴は入院期間の短さで、術後早期から日常生活に戻れます。
悪性腫瘍を患った祖父が何度も手術を受けて衰弱していく様子を見守ったT君は、低侵襲手術に興味津々です。

「医療人として大切にしていることは何ですか?」
手術前、こう質問したKさんに対して田端教授は「僕は外科医として3つのことを大切にしています」と教えてくれました。

■1つ目:期待以上の結果を出すこと
「患者さんは心臓外科医にすごく期待をしてやってきます。『この病気を治して長生きしたい、症状をなくして元気に暮らしたい』と。家族も、紹介するお医者さんもそう。そういう期待を常に超える、期待以上の結果を出すということを僕はすごく大事にしています。特に心臓外科は生命とかQOL(生活の質)に直結する科なので、やっぱり結果が大事だと思うんです」

■2つ目:常に進歩・改善を考えること
「医療はまだまだ分かってないことがたくさんある。課題を常に認識して現状に満足せず、常に自分の仕事を改善、グレードアップしていくことが大事。満足しちゃうと人間はそれ以上伸びない。医学は日進月歩、僕も最先端の低侵襲手術をやっているけど、“もうこれでいいや”と思ったらどんどん抜かれてしまう」

■3つ目:礼節を忘れないこと
「医師の仕事の面白いところは人間同士のドラマがあること。その中では常に礼儀正しくあるように心掛けています。医師と患者の関係って、どうしても医師が上になっちゃう。人間を相手にした仕事なので、基本的な礼儀を忘れちゃいけないなと思ってやっています」

低侵襲手術支援ロボット「ダヴィンチ」

1日目に見学した従来の手術と比べて、ロボット支援手術の傷はかなり小さく、回復が早いというメリットを実感できました。でも手術によっては公的保険が効かなかったり、医療費が高くなったりするほか、緊急時に使えないという課題があることに驚きました。


ロボット支援手術では3D映像をリアルタイムで確認でき、田端教授の手技に見入ってしまいました。一番驚いたのは、現在の技術では人間の補助なしではダヴィンチシステムを完璧に動かせないこと。実際に見学したことで自分の中で引き出しを増やすことができました。


【午前】循環停止が予定されていた心臓手術の見学--医師控室で天野教授や病棟医長から「目標を貫く大切さ」「医師である前に人、なぜ自己管理が必要なのか」などの話を聞く
【午後】手術支援ロボットda Vinciを用いた心臓手術(僧帽弁形成術)を見学。ロボット支援手術を行った田端実主任教授が考える医師の心構え、未来医療への取り組みなどについて聞く。