日本地域医療学会で生徒たちが発表しました

三重県志摩市で12月15日から3日間、第2回 日本地域医療学会 学術集会(主催:一般社団法人 日本地域医療学会)が開催され、最終日の17日にTtFの地域医療体験に参加した高校生が発表を行いました。

会場に集まったのは志摩市民病院、隠岐島前病院、南砺市民病院の体験に参加した生徒12人。このうち7人が「高校生による地域体験学習とは」と題したシンポジウムで、心を動かされた出来事や学び、葛藤などについてプレゼンテーションをしたのです。

最初に登壇したのは志摩市民病院の医療体験に参加した渋谷教育学園渋谷高校(東京)の2年生。社会的に孤立した患者さんの訪問診療に同行して感じたこと、そこから多くを考えさせられたことを紹介しました。現代社会で孤立する人々が増えているデータで示したうえで、「将来、医師として誰も孤立させない、幸せな社会作りに貢献したい」と将来の夢を語りました。

続いて、「病気だけを診るのではなく人を診る大切さ」に気づいたという徳島市立高校1年生、担当患者さんの看取りをしたことで目指す道が変わったという海陽中等教育学校5年生(高2)など──渾身のプレゼンが続きます。

末期がんの患者さんを担当して得た学びを発表したのは渋谷教育学園幕張高校の2年生2人。「小児科から内科、皮膚科の症状まで一人で診られる総合診療医がなぜ大都市圏にいないのですか?」という率直な疑問を大阪府立茨木高校1年生が問いかけると、会場の医師たちはうなずいたりメモをしたり。そして最後にマイクを握ったのは鷗友学園女子高校2年生。訪問看護でALSを発症した方に会った体験に触れて、「困難な病気にかかっても命がある限り人の人生は続くのだとことを気づかされた」「医師になれたら先入観なく、様々な境遇の人に手を差しのべたい」と発表しました。

発表の様子

後半は座長の白石吉彦医師、TtFの理事長、メンター医学生、会場の医師、地元の高校生らを交えたインタラクティブなやりとりの1時間。高校生を受け入れた病院の医師からは、「医師や病院スタッフの代わりに生徒たちが患者さんの本音を聞き出してくれる」「医療者のやりがいにつながっている」など病院にとってもメリットがあることが報告されました。また、TtFのサポート教諭からは、生徒の体験を授業に活用した実践報告の紹介もあり、地方の病院を起点に未来の担い手が多くを得ていることを共有できました。

質問に立った医療者たちからは「発表に感動した」「地域医療の従事者として嬉しい」「うちの病院でも行いたい」といった声が相次ぎ、最後はがんを患っているという医師からこんな言葉をいただきました。

「今日の発表はどんな抗がん剤より効く。生きる勇気をもらえました」

医師になりたい高校生にとって、あっという間の2日間。「未知の世界を知ることができた」と目を輝かせながら12人は志摩をあとにしました。

無償で生徒たちの送迎をしてくださった岩城ひろこさん、ありがとうございました!本当に助かりました。貴重な機会を提供いただいた学会の全ての方々、志摩の温かい皆さまに感謝します。

第2回・日本地域医療学会
「地域医療から日本を再興する〜答えのない新たな冒険へ〜」をメインテーマとした学術集会には全国から医療関係者らが集まり、総合診療やへき地医療などをテーマにさまざまな講演やポスターセッション、座談会が行われました(第2回 日本地域医療学会 学術集会プログラムPDF)。

担当した末期がんの患者さんから教わったことを発表する生徒
右上は、後半ディスカッションから参加した生徒5人と神戸大学医学部のメンター学生(=右端)。医学生たちは生徒を長期にわたりサポートしてくれました。左下は岡山大学のメンター学生。座長の白石医師からの質問に、「医療体験中は毎日振り返りで生徒たちをフォローしました」と報告。

TtF生徒たちの発表準備
学会からシンポジウム参加の提案を受けて、TtFが医療体験参加生徒たちに案内。希望者12人が集まり、このうち7人が発表、5人が後半ディスカッションから参加することになりました。医療の学術集会で高校生が発表するのは稀有なケースです。そのため、発表に向けて生徒一人ひとりが、メンター医学生とTtFとのオンラインMTGを11月から開始。白書や論文を読んだり、医師からレクチャーを受けたりと自らの体験の意味を調べはじめました。発表前日の16日には生徒12人が志摩市入りをして、全員で発表リハーサルと内容の見直し。お互い刺激を受けながら1か月をかけて準備をしました。

発表前日の16日に集合し、入念なリハーサルを行いました
初めて会う生徒たちも、プレゼンに向けて議論が盛り上がりました。夜は雨があがったので待望のBBQ!