5/14 Doctor X!第2弾[研修医からのメッセージ]

2023年5月14日(日)に開催予定の「第2弾 DoctorX!リアル・ミーティング」(講師:加藤友朗・コロンビア大学医学部教授/会場:鷗友学園女子中高)には、4月に医師になったばかりの研修医3名も参加し、みなさんのさまざまな質問に答えます。加藤教授の講義後、12時30分から約1時間程度の予定です。高校生のときに医療の現場を体験した新米医師3人が、みなさんに寄せたコメントをご紹介します!

※「第2弾 DoctorX!リアル・ミーティング」は、TtF賛助会員校など特定の学校を対象に事前案内しています。その他の学校生徒も申し込みできますが、定員に満たない場合のみ参加可能となることをご了承ください。

参加予定の研修医

水橋 優介さん みずはし ゆうすけ
東京医科歯科大学病院(研修医)
海陽中等教育学校(愛知)卒/島根大学医学部医学科卒
【関心のある診療科】内科系、小児科、産婦人科、泌尿器科
【趣味・特技】テーマパーク巡り、スタバのスタンプ集め、中国語会話、旅行、スキューバダイビング

Q 「これだけは自慢できること」は何ですか?

コミュニケーション力です。医学部受験はそれで突破できたと思っていて、現に面接の配点割合が高い推薦で合格しました。相手の話を聞いて、ユーモアをもってリアクションする、スムーズに言葉が出ることは、医師をやっていく上で有利かもしれないと感じています。
 
医学部受験には必ず面接がセットになってるので、コミュニケーション力があると、点数も上がるのではないでしょうか。

Q 医学部時代に力を入れて取り組んだことは?

大学2年生のとき、文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN」を利用して、約2か月間インドとネパールに留学しました。もともと国際医療支援に興味があって、実際に現場を見てみたかったからです。多くの人の力を借りながら実現できたことで、準備から留学中のプロセスで、対人スキルや問題に対応する力など、いろいろ成長できました。

「トビタテ!留学JAPAN」は文科省主催の奨学金で、私の頃は大学生メインの留学奨学金でした。でも、今は高校生対象にシフトしています。行き先や内容は自分で決めて、文科省がお金を出してくれる。成績、英語力も不問で、ものすごくおすすめです。

Q 研修医になった感想は?

高校生の時は、楽観的に大きな目標ばかり考えていましたが、研修医となった現在は「目の前のことを見る」、超現実思考になりました。一気に大きな目標に向かうのではなく、目の前の小さな目標を達成できるように過ごしています。

日々の業務や勉強しなくていけないこと、そして周囲の人たちとの交流――。やるべきことは目が回るほどたくさんあるので、目の前だけを見つめ、一つ一つ処理していくマインドで過ごしています。

マラソン選手が似たようなことを言っていました。「ゴールを目指すのではなく次の電柱、さらに次の電柱を目指す。それを繰り返して、最終的にゴールに辿り着く」

Q どんな医師になりたいですか?

国際医療支援に携わるため、まずは一人前の医師になりたいです。一人前というのは、全身の疾患をある程度知っていて、どんな患者が来ても初期対応できる医師ということ。そして、自分の本当に興味のある専門分野を見出し、プロフェッショナルになりたいです。

Q 医師をめざす高校生に伝えたいことは?

自分が経験したことからしか、情熱や夢は生まれない」と思っています。

僕の場合は高校時代に大きな転機が2つありました。一つは高校1年生のとき、一人旅をしていた中国の農村部で発熱をしてダウンしたことです。現地の医療を身をもって経験し、「世界中の途上エリアにも日本式の医療があるといいな」と思ったのが医療に興味を持ったきっかけです。

二つ目は高校2年生の夏、現在のTtF理事長が企画したプロジェクトに参加して、順天堂大学心臓血管外科でリアルな現場を見学できたことです。手術室や休憩室で天野篤教授の薫陶を受けたことで、目指す医師像がより具体的になりました。

決して成績が良かったわけではありませんが、医学部に合格でき、医師国家試験もクリアして今は次の目標に向かっています。このように、原体験から生まれた情熱があると物事を成功させやすいと思っています。経験したからこそ、情熱や夢が生まれ、実現する力が培われたと思っています。逆にいえば原体験なしに、情熱や夢を持ち続けるのは難しいかも…。

「誰もが、そんな体験ができるわけではありません。どうしたらいいのですか?」と言われてしまうかもしれませんね。確かにそうかもしれませんが、僕が考えていることは5月14日、中高生のみなさんにお実際に会いして話すことができればと思っています!

また、大学受験的なことをいえば、「まずは合格すること」を優先してもいいのかな、と思います。

日本の医学部にはいろいろな受験制度があり、極端な例だと指定校推薦もあります。僕の受験した枠は国立島根大学の推薦で、「高校3年生の夏に1週間島根県内で医療体験をすること」が出願の要件になっています。そんな推薦があること自体、知っている人は少ない。高校の先生はもちろん、予備校の先生も知らなかったです。みんなが知らない制度だからこそ受かりやすい。だから高校生の皆さんは周囲に頼りすぎず、自分で受験制度を研究することをおすすめします。成績に自信がない場合も、そういうところに活路を見出せる。自分で真剣に探すほかないと思います。

さらに悩むのが、「ワンチャンで首都圏医学部」or「わりかし受かる可能性の高い地方国公立医学部」どっちにするのか問題。高みを目指しすぎて、受かる保証なく浪人するか?現実を見て、地方国公立大学に現役で行くか?

確かに首都圏にいれば多くの機会があります。受け身の姿勢でも、いろいろな巡り合わせがあります。一方、地方で受け身でいると、そのような機会、出会いは限られているかもしれません。考え方はそれぞれなので、自分の性格で判断したら良いと思います。


河端 実さん かわばた みのり
順天堂大学医学部附属浦安病院(研修医)
市川高校(千葉)卒/順天堂大学医学部卒
【関心のある診療科】乳腺外科、形成外科
【趣味・特技】映画鑑賞、ヨガ、英語

Q 「これだけは自慢できること」は何ですか?

小学1年から5年まで、父の仕事の関係でアメリカの現地小学校に通っていたので、英語力は特に自信があります。

Q 医学部時代に力を入れて取り組んだことは?

将来は英語を活かして海外でも臨床を行いたいと考えており、学生中にUSMLE(United States Medical Licensing Examination=アメリカの医師免許試験)step1を取得することを目標としていました。しかし、ひとりで勉強を始めてみてもわからないことが多く、なかなか進みませんでした。

5年生のとき、大学の先生を中心に同級生と勉強会を始めました。2週間に1度の勉強会に参加することで、周りとペースを合わせ相談することもでき、「絶対受けてみよう」という気持ちになれました。6年の4月に受験し無事合格したあと、大学の英語の先生からOET(Occupational English Test)という、現在USMLE取得の条件となっている医療英語能力試験を受けてみてはと提案をいただきました。オンラインの指導もあり、OETでも必要な点数を取得することができました。

USMLE取得に必要な条件は随時変わっているため実際に使用できるかは分かりませんが、大学の手厚いサポートにより入学当初の目標以上のことを達成することができ、大きな自信につながりました。

Q 研修医になった感想は?

一番変わったと感じることは、自分の発言に対する責任の大きさです。曖昧な知識やあやふやな表現を使わないように、情報をしっかり頭のなかで整理して、うまくプレゼンテーションすることを毎日求められています。医療従事者同士の連携をスムーズに行うには、わかりやすく情報をまとめる必要があり、試行錯誤しながら練習しています。

Q どんな医師になりたいですか?

短期的には初期研修中にUSMLE step2CKを取得すること、その後に専門医を取得して海外留学をすることが目標です。

また高校生のころは外科手技に強い憧れを抱いていて、将来はオペがたくさんしたいと思っていました。しかし学生のときさまざまな診療科を実習し、臨床だけでなく研究も医学の進歩に大きな役割を果たしていることに気づきました。将来、臨床を行いながらより良い検査や治療の開発にも貢献したいという気持ちが強くなっています。

Q 医師をめざす高校生に伝えたいことは?

まだ始めたばかりですが、医師という仕事は命を預かり、重大な判断を委ねられる場面も多々ある大きな責任を伴うものです。また医学部を目指すということは、高校生という10代のうちから将来の進路を決め、人生における大きな決断をするということです。その決断には勇気も必要ですが、日々やりがいを感じられる特別な仕事だと思っているので、皆さんの選択を応援しています。


圡方 美奈子さん ひじかた みなこ
東京都立墨東病院[1年後は東京医科歯科大学病院](研修医)
学習院女子高等科卒/昭和大学医学部卒
【関心のある診療科】小児科、新生児科、血液内科
【趣味・特技】クラシックバレエ

Q 「これだけは自慢できること」は何ですか?

クラシックバレエを18年間続けていることです。あまり上手ではありませんが、継続していることがプチ自慢で、4月の発表会にも出演しました。ひとつのことを長く続けると、それだけ自分の課題と向き合わなければいけない。その経験をほかのことにも活かせたらいいなと思っています。働き始めても細々と続けていきたいです。

Q 医学部時代に力を入れて取り組んだことは?

大学の先生の指導をいただきながら、日本病院総合診療医学会、日本周産期新生児医学会、日本小児科学会で症例報告やポスター発表を行いました。「症例報告」というのは、珍しい経過をたどったケースについて、どうしてそのような症状が出たのかなどについて考察して発表するものです。教科書で学ぶのとは違う視点で病気の知識を深めることができ、貴重な経験になりました。

海外の医療や医学教育にも興味があり、6年生の4月に、ハワイの病院で1か月間実習をしました。アメリカの研修医や医学生、医学部を目指す学生と交流して、医学部入学までの道のりやカリキュラム、実習や研修の内容などいろいろな違いを知って刺激を受けました。

Q 研修医になった感想は?

この4月から研修医として東京都立墨東病院で働きはじめました。現在は血液内科で初期研修中ですが、薬の処方や他の医療職の方々に指示をする立場となり、自分の決定が患者さんの命に関わるのだということを改めて実感しています。

例えば、腎機能の悪い患者さんのケース。入院当初はカリウムの入っていない点滴を受けていましたが、では、腎機能が改善された後も同じ点滴を続けていいのか、ということを考えなくてはなりません。点滴の種類や量は先輩医師に相談しながら決めますが、点滴ひとつをとっても、患者さんに大きな影響があるのです。当たり前のことですが、自分が選んでオーダーした点滴の結果を受け止めないといけないことが、学生時代とは違います。
 
「命を預かる重さ」は医学部を目指していたときからずっと意識してきたつもりでしたが、免許を持って働き出し、さらに強く感じるようになっています。ベッド上で安静にするべきか、起き上がる練習をしても良いのか、ということも医師から看護師さんに指示を出さなくてはいけません。病気を治すだけではなく退院後の生活も考えて、どれだけ食べられているか、動けているか、身の回りのことができているのか――実に多くのことに目配りをしないといけない仕事なのだと感じています。

Q どんな医師になりたいですか?

「先生」と呼ばれるようになっても、常に目の前の患者さんから学ばせていただく謙虚な気持ちを、変わらず持ち続けたいです。まずは初期研修を通して、全身のどこの不調でも適切に対応できる、あるいは適切な専門家に繋げられる医師になりたいです。中長期的には、実際に患者さんを治療する臨床医として働くことが目標ですが、一度は基礎研究にも触れてみたいし、ゆくゆくは教育にも携わりたいです。

Q 医師をめざす高校生に伝えたいことは?

医師は社会になくてはならない存在で、知識や技術を活かして人を助けることができる素晴らしい職業だと思います。

一方で、自分の力不足で患者さんの命を奪ってしまうかもしれない職業でもあります。医師という仕事の負の側面も意識して、それでもなお医師になりたいと思えることが、いちばん大切だと思います。